2018年1月26日、コインチェック株式会社(以下「コインチェック社」といいます)が保持している仮想通貨のうちNEM(ネム、通貨記号はXEM)建てによる預り資産5億2630万0010XEM、事件発覚時のレートに換算すると約580億円 が会社から失われるという事件が発生しました。これはクラッキングによる盗難であるとコインチェック社から説明されています。
26日以降現在に至るまで、コインチェック社は、仮想通貨の入出金、売買、日本円の出金を自主的に停止している状態が続いています。
コインチェック社は同月27日、「1月26日に不正送金されたNEMの補償について」とする発表を行い、自己資金による返金の意向を示しました。同月28日にコインチェック社より日本円での返金が発表されましたが、返金時期や方法などについては明らかにされていません。また、本来ならば返還が容易であるはずのNEM以外の資産についても出金ができない状況に対しては、不可解であると様々な疑念が生じています。
こうした状況を受け、同月29日には金融庁が同社に対し、業務改善命令(2月13日までの報告の徴求など)を出しました。
その後、2月2日に行われた金融庁の立ち入り検査によってもなお、コインチェック社の資産状況は明らかにはならず、顧客の資産と自己の資産の分別管理がなされていないのではという憶測も出ています。
本件はNEM喪失の経緯、コインチェック社の資産状況、返済の見通しなど、不透明な部分が多い事件であり、今後の展開次第では前代未聞の大規模な被害が発生する可能性すらあります。
そしてそのような被害がもたらされることで、結果的に仮想通貨の信頼を傷つけ、政府による過度の規制をもたらし、日本における仮想通貨の未来を閉ざすという形で、仮想通貨の未来そのものにもまた悪影響を及ぼすことになりかねません。
今回の事件において、当弁護団は、可能な限り早期に、少しでも多くの被害者の損害が十分に回復されることを目的としています。また、守られるべきものが守られることによって仮想通貨を巡る秩序に資し、ひいては未来の経済の可能性に貢献できることを目指して参ります。